さて、チョコレートを食べてご機嫌になったお子様をなんとなしに眺めて、どうするべきかとぼんやりとした頭で思う。無意識にとりだしたスマホでGPSを起動させてみたが、位置情報が取得できないようでマップが表示されない。GPSって、圏外でも位置さえわかれば機能するはずだった気がするんだが。仕方がない。夕日もどんどん沈み始めていることだし、ともかく人気のありそうな場所を目指していくしかないだろう。

「さて。このままここにこうしててもしょうがない。動くか」

もはやただ電池を食うだけの代物になってしまったスマホを再び仕舞い、俺はぽかんとした顔でこちらを見上げる子供へもう一度目線を合わせた。

「少年、どっちから来たかとか、覚えてたりするか?」
「あっち!……違った、こっち!」
「……あー、うん、よくわかった」

つまり、覚えてない、と。予想していたとはいえ、結構な脱力感が俺を襲う。まあ、見た目小学生っぽい子供がパニック状態でまともに何か覚えてられるほうがおかしいだろうしなあ。GPSによる「地図を見る」、迷った場合の「引き返す」ができないのは地味に痛い。

「仕方ない。とりあえず見通しのいい場所にいくか」

テレビの情報番組で、確かそんなようなことを言っていた。あの時はへー、ぐらいにしか思わなかったが、ぼんやりとでも知識があると、気持ちが全然違ってくる。さすがに、子供の前で情けない姿は見せたくないしな。

さて、行動が決まったら、次は装備の確認だ。自分がいま何を持っているのかを把握しておくのは結構大事なことだと俺は思う。防寒対策になりそうなものは、今着ているジャケットとマフラーくらいしかない。メッセンジャーバックの中には、この状況では対して役に立たないだろう財布と家の鍵、さっき使ったタオルと、半分くらい中身が残ったペットボトルくらいしかない。

まあ、水場さえ見つけることができれば、中身の補充はできるだろうし、食糧に関しては、ハルカサン達からもらった菓子がある。しかもおあつらえ向きのチョコレートだ。万全とは言えないが、ないよりましだろう、という感じ。何とかなるといいが。

「少年、もう少し頑張って歩けるか?」
「歩ける!」

子供とはいえ、慣れない道を抱えて歩くのは大変体力を使うので、できれば本人の足で歩いていただきたいと思っていたので、その返事にホッとした。どうしても歩けないというのであれば、背負う覚悟はしていたけれども。

調子に乗って体力が減ったところで衰弱死、っていうのが怖いなあと思っていたわけだが、考えてみればどう見ても山の中っぽい田舎道である。一番怖いのは、野生動物の類かもしれん。

……猪や熊が出ないことを切に願うぞ、俺は。







13.05.12〜