体を、ぴとっ



たしかに。たしかに、紋章ってなんなのか教えてやるとはいったけれども。

「あー…さん。ちょっと近づきすぎじゃあ、ないですかね?」
「ん?」

ぴとっと身体を寄せるようにして、俺の右手につけた紋章に興味津々ながくっついている。ちょっとずらせば鼻先がくっつきそうで、やばい。なんか知らんがやばい。は俺のつぶやきなんか聞こえないみたいで、手の甲にうっすらと浮かび上がる紋章を、めずらしそうに指でなぞっている。骨にそってそおっとなぞられると、なんていうかこう…勝手に盛り上がりそうになる。耐えろ俺。

「だーめだめ。ほら、ちょっと離れる」
「あ、ごめん、なさい。ヤでした?」
「いや、ヤじゃないよ。むしろ良いですよ。でもね、良いから困るってこともあるんですよ」

不思議そうな顔して俺を見上げてくるに、あーこれ、いま俺が言ったこと全然分かってないな、と痛感する。だってのふにふにしたおっぱいが二の腕にまだあたってんですよ。やわらかいんですよ。俺ってば健全な16歳男子なんです。女の子とそーゆーことしてえなって思う訳ですよ。

だって、俺に対して『ちょっとやだなー』とか、思う事あるだろ?」
「シーナに?」

きょとんとしたは、「ないと思います。です」といまだ慣れない様子でたどたどしい言葉を返してくれた。

「シーナは、わたしがほんとにヤーなこと、しない、です。それ、他の女の子にも同じ」

そゆとこ、すきよ。

俺の手を両手で優しく包んで、陽だまりみたいにふわっと微笑むに思わず思考が停止した。待て待て待て。今のの言葉に他意はない。あの花かわいいとか、この犬かわいいとか、そういう意味の「好き」だ。あなたとやらしーことしたいわっていう好きじゃないんだ。良し、良し。…良し。

「そ?俺もの事、好きだぜ。かわいいし」
「…ほんとう?」

妙な雰囲気に片足突っ込みそうになった俺の気持ちを誤魔化すように茶化したっていうのに、そういう顔をするのは反則じゃねえだろうか。くそう。

「ホントホント。すげーかわいい」

絶世の美少女!ってわけでもないのに、なんでこんなに気になるんだろうねえ。女の子は大好きだし、声だって前と同じようにかけたりしてるけど、なんとなく、なんとなくのいる前でそれを見られるのははばかられるしで。本気で惚れたのかね。そういう事なんですかね。どうなのよシーナくん。わかりませんよ、シーナさん。

なんて、頭の中でわけわかんないこと考えながら、俺の右手はのやわらかな拘束からぬけて、彼女の頬をそろっと撫でていた。気持ちよさそうに俺の手を受け入れて、瞼を閉じる

無防備すぎるだろう。まったく、見張りも見回りも来ないのをいいことに、このままチュウしちまうぞとか思っていたら、の傍らに腰をおろしていたウルフが俺のヨコシマな考えを嗅ぎとったのか、グルル…と牙を見せる。「ひえっ、」何人もの帝国兵の喉笛を噛みきってきたその鋭さに、思わずから距離をとった。

「シーナ?」
「うんにゃ、なんでもない、なんでもない」
「でも…」
「だーいじょぶだから」

なにがだよ、と内心でツッコミつつ、ひらひらと手を振って、今日はもう遅いから勉強は明日にしようなと言い残して自室へと戻った。どこかしょんぼりと気落ちしたには気づかないフリで。だってそうだろ。見たら絶対、俺、止まんねえもの。

「あー…柔らかかったなあ…」

とりあえず今日の所は、なんとも素晴らしい夢が見れそうである。




11.10.05
健全な男子の思考回路が分からん。