ありふれたチョコとキス



そう言えば、今日はバレンタインだな。


くく先輩の部屋で、いつものように勉強を教わっていたら、わたしが問題を解いている間に暇そうにしていたくく先輩が、たった今思いだしたと言わんばかりにつぶやいた。

手元には、暇つぶしに読んでいたと思われる、女の子向けのファッション雑誌。つまり、わたしの。

「…あの、でもわたし、チョコ持ってないですけど」

ちょっと休憩しようかと言われたから、疲れた時ようにってコンビニで買っておいた良くあるチョコレートのお菓子なら持っていたけど、くく先輩、まさかこれみて言いだしたとかじゃ、ないよね?

「え。そのお菓子ってチョコじゃないのか?」
「チョコです、よ?」

チョコだけど、そういうチョコとは違うものだから、持ってないって言ったんだけど、くく先輩はチョコレートならなんでもいいみたいで、「くれないの?」と笑う。

「もっとちゃんとしたのあげたいから、来年まで待ってくれませんか」
「それももらう。けど、これももらう」

そういって、わたしの口にひょいとチョコレートをさし込んだくく先輩が、にこにこと楽しそうな顔で、ぱくりとチョコレートを口に含む。


くく先輩の家での、二回目のキスだった。




12.02.03

きみからなら、いくらでも欲しいんです