すっかり暮れた空に浮かび上がるように、ぼんぼりの灯りが揺れる。風に乗ってかすかに聞こえる笛の音を感じながら、兵助は鳥居の下でぼんやりと人を待った。 祭りの入り口というのは、待ち合わせ場所にうってつけなのだろう。いくつもの家族連れやカップル、友達同士で集まったものたちが、兵助の周りでわっと盛り上がっては、去っていく。 迷子にでもなったか。それとも…? 心配になって、携帯を取り出し、履歴の一番上に乗っている番号へかける。数回のコールのあと聞こえてきたのは、申し訳なさそうな彼女の『すみません』という声。 「、大丈夫か?」 『はい。もうちょっとで着きますよ』 たしかにもう少しなのだろう。電話を通して聞こえるざわめきが、兵助のいる場所のざわめきと似ている。ならばと電話を切ろうとしたところで、『あっ』と、嬉しそうな声がする。 『見つけました。浴衣、似合いますね。くく先輩』 耳元で聞こえる笑い声がくすぐったく、自分だけが相手に見られているというのも落ち着かないのであたりを見わたせば、前方に見なれた彼女の姿をとらえた。 今どきの華やかさを前面に押し出した浴衣とは違い、昔ながらの柄ではあるが、同年代の子に比べるとどこか落ち着いた雰囲気のあるには、よく似合っている。 「俺も見つけた。似合うな、それ」 こちらを見ながら小さく手を振る彼女の携帯越しにそう言ってやれば、照れくさそうに「おばあちゃんに着付け、習ったかいがありました」と笑う。その間にも、彼女はゆっくりと兵助に近づいてくる。 まわりのざわめきにかき消されているはずなのに、カラコロと足元の下駄の音がはっきりと聞き取れるから不思議だ。 「お待たせしました」 「そんなに待ってないけどな。まあ、でも、ちょっと寂しかった」 いい歳して何言ってるんだか。口にしてしまったあとにそう思っても、もう遅い。頼りない人だとか思われてないといいけど、とちらりと隣を見れば、クスクスとうちわで口元を隠しながら笑っている。 「くく先輩って、意外とさみしんぼうですよね」 「……だって、ここで一人で待ってたらそうなるぞ」 自分以外の人は、次々に待ち合わせを終えて祭りへと繰り出していくのに、自分だけがいつまでも取り残される感じはかなり寂しい。ちゃんと来るはずの相手がいるのだから、なおさらだ。 「はぐれちゃいそうですね」 「だな」 どちらともなく手の平を寄せあって握る。 「どこから見ていきましょうか」 「が気になる所から見ていくか。わたあめとか好きだろ?」 「…すぐそうやって子供あつかいする」 「してないよ」 夏の夜とはいえ、触れ合えばそれなりに熱く感じるのだが、今は二人の間にうっすらと浮かんだ汗さえ嬉しいと感じるのだから不思議だ。 すっかり拗ねてしまったに苦笑して、とりあえず、一番ちかくにある飴細工屋へと連れていくことにした。 12.07.04 夜空にあがる花を、きみと |