しずおがうまれてから、2ねんのつきひがたった。ついこのあいだまでハイハイしかできなかったしずおも、いまではおれのあとをちょこちょこついてくる。おれのおきにいりだったウサちゃんリュックをせおってるのなんか、めちゃめちゃプリチーだ。ちなみにおれは、おやじがあたらしくかってくれた『こにゃんこ』シリーズのネコちゃんリュックにレベルアップしていたりする。 「あー、うー」 そしてなんと、あれからもうひとりおれにおとうとがふえた。なまえはかすか。しょうじき、ちょっとへんななまえっておもった。しょうらいいじめられちゃったりしたらどうしよう。ま、そんなことになんかさせねーけど。 「こら、かすか、これはメッていったでしょ!」 ハイハイができるようになったかすかは、あっちこっちにうごきまわるうえに、きょうみをもったものをなんでもくちにいれようとする。いまも、さんかっけいのつみきをくちにいれて、よだれでべとべとにしていた。つみきもさいなんだ。おれにしずおにかすかにと、よだれのせんれいをうけているんだからな。 「う……うえええ!」 おこるおれのこえにびっくりしたのか、ぽけっとしていたかすかが、いきなりビエーとなきだした。ああ、もう!あわててかけよってかすかのからだをだっこして、ぽんぽんせなかをたたいてやった。よしよし、びっくりさせてごめんなー。でもほんとうにあぶないから、なんでもたべちゃだめなんだぞー。 そんなことをしながら、かすかがすきなあかちゃんせんべをさがす。ものでつるのとか、ほんとうはやらないほうがいいんだが、てっとりばやいんだよ。どこだっけなー。おふくろがいないときでもおれがかすかにあげられるようにって、てのとどかないばしょにはしまってないはずなんだけど。 しばらくあっちこっちうろうろしながらさがしていたんだが、そうこうしているあいだに、かすかをささえるうでからちからがぬけてきた。おっことしてまたなかれてもこまるので、よたよたしながらもリビングのソファへとかすかをおろす。 「いいこにしててね。うごいたらおっこちて、イタイイタイしちゃうからね」 なきやみかけてるかすかのあたまをいいこいいこしてやると、いつもごはんをたべるときにつかういすをもって、だいどころへとまいもどった。おおきくなったときようにおとなとおなじサイズのそれによじのぼると、おふくろがいつもおれたちのおやつをいれているいれものをてにとった。 おー、あったあった。まちがえていれちゃったのかなあ。まあ、みつかったからいーけど。とりあえず、あかちゃんせんべのふくろだけをもって、のこりのおやつはもとのばしょにしまっておいた。 「…ねーちゃ、なにしてうの?」 「しずお、おはよー」 お、ようやくおひるねからおきたようだな。まだねむたそうにまぶたをこすりつつおれをみあげているのは、2さいとししたのしずおだ。かたてに、おきにいりのウサちゃんにんぎょう(リュックとしてつかわないばあいはぬいぐるみになるすぐれものだ!)をひきずるしずおは、ねおきのせいかぶすっとしている。 「ねーちゃんのうそつき!いっしょにねんねってゆったのに!!」 さみしがりやのしずおは、おれがそばいないとすぐなく。で、ときどきこうやって、じぶんのようきゅうがあいてにうけいれられないとダダをこねる。まあ、こどもだからしかたないんだろうけどさ。おれだって『こども』なので、そんなことをいわれるとカチンときてしまうわけなのだよ。 「うそついてないもん。ちゃんとしずおとねてたもん。しずおがおきるのがおそいのがいけないんだもん」 ツン、とそっぽをむくおれ。あんなふうにいわれたら、だれだっておこるということをしずおはまなぶべきだ。しかいのすみで、しずおがかおをまっかにしながらなくのをこらえているのがみえたが、そこまでめんどうみきられねーのでほうちすることにする。どうせそのうちひとりがいやになってこっちくんだろ。 「かすかー、いいこにまってた?」 リビングにもどると、『ステイ』のじょうたいでまってたかすかは、あたまをなでてやるとうれしそうにこえをあげた。んー、げんきん。でもこどもってこんなもんだよなあ。 「えらいえらい。そんなえらいかすかには、ゴホウビで〜す」 「あうー、あうあ、おー」 あかちゃんせんべのふくろをやぶって、1まいをかすかのてにもたせてやる。かすかはキャッキャとおおよろこびで、あむあむとせんべをくちにいれた。まだはがはえてないので、だえきでふやかしてたべるってかんじだが、ふくふくのほっぺにちまこいてでむいむいおしこんでるすがたは、おとうとながらすんげー、かわいい。ぼせいほんのうってやつがしげきされまくりだぞ、このヤロウ。 「…ねーちゃ、おいてかなっ…で!」 「わっ!」 あっというまにたべおわって、2まいめをようきゅうするかすかにあたらしいせんべをわたしてやると、しずおがおれのからだにとっしんしてきやがった。いきおいをころせなくて、おもいっきりソファのかどにあたまをぶつけたおれは、ヒリヒリするあたまをなでつつ、もんくをいってやろうとしずおをふりかえった。 「…ひっ」 「しずお…?」 え、なんでないてんの? てっきりおれ、しずおがおきたときにとなりにいなかったのと、さっきだいどころにおいてきたってことでおこってるんだとばっかりおもってたのに。だけど、しずおはおれのふくをぎゅっとにぎったまま、すんすんないていた。いつもみたいに、かんじょうにまかせるままのおおなきじゃなくて、すんすん、ないてた。 「たーい、あい」 どうしたもんかね、ととほうにくれていたおれのくうきなんてサラサラよむきもないかすかが、てをばたばたさせてそんざいをしゅちょうする。なんだ?とおもってかすかのほうへかおをむけると、よだれでべっとべとのあかちゃんせんべをまんめんのえがおでさしだしていた。 え、たべんの? このじょうきょうで? できればえんりょしたいなーっていうくうきをよむのは、かすかにはまだはやかったらしい。ふしぎそうなかおをして、たべないの?ってうったえかけてくる。しばらくそうやってかすかとみつめあっていたが、たぶん、これをきょひしたらこんどはかすかがおおなきするんだろうなってことはよういにそうぞうできる。 「たい?」 「ん、なんでもない、なんでもない。かすか、ありがとね」 いをけっして、べちゃべちゃのあかちゃんせんべをくわえると、かすかはふにゃあってわらってごきげんになった。と、いつのまにかあたらしいふくろをてにもっていたかすかは、おれにあけてくれとねだる。ようきゅうどうりにあけてやると、こんどはおれのうしろにひっつきムシになってるしずおに、「あい」とさしだした。 けど、ずっとおれのせなかにかおをおしつけてすんすんないてたしずおがきづくはずもなく、おれがこえをかけてやって、ようやくかおをあげ、さしだされたままのあかちゃんせんべをみてキョトンとしたかおをした。 「ホラ、かすかがしずおにって」 「……いいの?かすか」 「あぅ」 おずおずてをのばしてせんべをうけとるしずおにまんぞくしたのか、かすかはまんめんのえみをうかべて、てにのこったせんべをくちにした。つられるように、しずおもせんべをくちにする。おお、どうやらしずおのきげんもなおりつつあるようだ。いやー、かすかさまさまだな! 「しずお、どこにもいかないから、てェはなして」 「ん」 おれのことばにこっくりうなづくと、ギュウギュウにぎっててたふくをようやくはなすしずお。…おー、みごとにシワになってんなあ。まあいいか。どうせせんたくすんだろ。 なかよくせんべをかじってるふたりをソファにすわらせて、おれはしんしつからでっかいもうふを1まい、ずるずるひきずりながらももってくる。いつもかぞくぜんいんでねるときにつかうもうふは、おれたちちみっこがつかうとよけいにデカクかんじる。 「しずお、はしっこね。かすか、まんなか。、はんたいね」 あかんぼうのかすかをまんなかにして、しずおとおれでさんどいっちにしてよこになる。まだちっこいからできることだ。あそびまわったり、おおなきしたりしてつかれたかすかは、もうふをかけてやるはしからふわぁ、とあくびをしてムニャムニャとゆめのなかへとたびだってしまった。 きづけば、しずおもまぶたをおもたそうにさせている。なんかひっしでおきてようとしてるみたいだけど、ムダなどりょくはやめておいたほうがいいぞー。あらがうだけ、ムダだ、ムダ! 「こどものうちは、ねるのがおしごとなんだから、しずおもねんね、しよーね」 かたからずりおちかかってるもうふをかけなおしてやって、ぽんぽんとかるくたたいてやれば、しずおはあんしんしきったゆるいかおでスーっときもちよさそうにねむりについた。 「……ふいー、やっとねたよ。さて、おふくろはきょうやきんねーし、おやじはきょうもていじあがりだろうし。うん、おれもちっとねるかな」 こどものたいおんって、ぽかぽかしててきもちいいしな。もうふにくるまって、もぞもぞとねごこちのいいたいせいにからだをなおす。つかれていたせいなのか、おれのいしきは3びょうとたたないうちに、かすかやしずおとおなじゆめのせかいへとたびだつのだった。 11.01.17 平和島家の家族構成、捏造してます。原作・アニメと違ってたらごめんなさい。 |