我にかえった朝



ずきずきと痛む頭と盛大な吐気に襲われて、私はむっくりと起き上がった。暖かいこたつの側には大量のビールの空き缶が転がっていて、ヤケ酒にしても多すぎる。そこまで考えてから、ふと部屋全体を見渡す。見覚えのない間取りにぼんやりと、『酔ったいきおいで』という言葉が浮かんできた。…覚えているのが天井だけなんてのは激しく遠慮したい。全く何も覚えてないのだっていやだ。考えれば考えるほど気分が最悪に傾いていく。我慢できなくなって、私は猛烈にトイレに行きたくなった。吐く。このままじゃ確実に吐いてしまう。

よろける体に何とか力をこめて立ち上がった。ずきん、と頭の痛みが強烈になったけれど気にしてられない。暗い部屋には、窓から朝の光が差し込んできていた。グレイの光ですら、目に入るとチカチカとまぶしい。一刻も早くトイレへ行きたくて、ずるずると壁伝いに手探りで知らない家を探していく。…それにしても、広い家。多分マンションだろうけど、トイレがまだ見つからない。

「…やば」

本格的につんとしたものがこみ上げてきて、私は思わず手で口元をおおった。けれど、こみ上げてくるものは押さえようがなくて。どうしようもない思いと一緒に、盛大に床にぶちまけてしまった。とうとうやってしまったという思いがどこかでぼんやりあったけれど、もう何もする気になれなくて。ただ酷い臭いのする吐瀉物の隣に座り込んだ。

「…すぐそこがトイレなんだからさぁ、そこで吐いてよね」

すぐには反応できなくて、ぼんやりと声の降ってきた辺りを見上げる。そこにはまだ眠たそうに頭をかくカッコイイ男の人が立っていて。私はただこっくりと頷くと、何で片付けようかと辺りを見回した。

「そこの扉開けてくれたら、まだ使ってないトイレットペーパーあるから。ゴミはまとめて袋に入れといてね」

それだけいうと彼はふらりとこたつがあったほうではなく、薄暗いほうへと消えていく。きっと寝室に向かったのだろう。私は言われたとおりに後始末をして、残った臭いを消すために鞄の中に入っていたコロンを2、3回吹き付けておいた。アレで取れるとは思わないけれど、何もしないよりは少しはマシだと思う。片付けが終ると、私はまだ痛む頭を抱えてその部屋を飛び出した。

いつまでも得体の知れない人の家にいるなんてごめんだった。




05.11.13