同じ瞬間、同じ癖



駅に走ってやってきた大和君は遅れてごめんね、なんて月並みな事を言っていたけれど、本当は全然遅れてなくて。それを指摘すると、本当は僕が先に待ってたかったから、と言う。いつもの笑顔で。だから私も、いつものように流す。大和君の言葉はいつも私の心にストレートに飛び込んでくる。染みこんで、私の心を満たしてしまう。まだ私は、大和君のことだけを考えるなんて出来ないと思っているのに。

電車を乗りついで、ついた遊園地は結構大きくて。遊園地なんて久しぶりだな、なんて考えていたら、いつのまにか大和君がチケットを買っていてくれた。ごめんね、といって入園料を払おうとしたら、やんわりと断られて。

「じゃ、俺のも払ってもらおっかなー。こ・ば・や・し・クン」
「ち、ちちちち千尋クンっ?!なんでここにいるの?!」
「聞いてよチャン、小林クンったら俺のことのけものにするんだぜ?ひっでぇよなぁ」
「だって言ったら絶対ついてくるでしょ、千尋クンは!!」

二人きりじゃないんだと思った瞬間、残念だなと思った気持ちの分、ホッとした気持ちもあった。 大和君といるのがいやなわけじゃない。自然すぎて――この人の隣にいるのが当たり前になっていて、それがすごく怖い。それがどうしてなのかとかそういうことは分からないけれど。だから、正直千尋君の存在がありがたくて。

「……ありがとう、千尋クン」
「何のことー?」

とぼける千尋君にもう一度ありがとうとだけいうと、私は二人の腕を取って遊園地の中へ入った。三人できゃーきゃーいいながら、絶叫系に乗ったり、ほのぼの系に乗ったり。途中でバテてベンチで休んでいたら迷子の子に懐かれてしまったり、迷子センターにその子を一人置いて置けなくてしばらく一緒にいたり。

「あ、お化け屋敷」

パンフレットを見ながら歩いていた時に、千尋君が立ち止まったのは歩いてはいるお化け屋敷の前で。私は乗り物に乗って入るお化け屋敷ならまだ『なんとか』いけるのだけど、これは絶対にダメで。

チャン、俺と入らない?怖かったらしがみついてもいいからさ」
「千尋クンっ!いやだったら他のアトラクションに行こう。ね?」
「えー、つまんねー。他のアトラクションったって あと残ってんのメリーゴーランドとコーヒカップじゃん」

つまらなさそうに呟いた千尋君に私はどうすればいいのか分からなくなる。どうして、三人で入るという選択肢はないんだろう。それは一度に入る定員が決まっているせいなのだけれど。

「めんどくさいなあ、もう。俺とがイヤなら小林クンと言ってくればいいでしょ」

どん、と突き飛ばされて私の世界は暗転する。おどろおどろしい音がステレオで聞こえて、振り向いた光の先ににっと笑う千尋君がいて。謀られた…。拗ねたのかと思ってたら。

「こ、怖かったら、目、つぶってていいからね」

そんなこと言ってる大和君の方が今にも目をつぶりそうで。今にも何かが出てきそうな音と、生暖かい風が中からじんわりと吹いてくる。思わず大和君の手を握り締めてしまった事に気付かないでほしいと思いながらぎゅっと目をつぶる。ぴくりと彼の手が跳ねたけれど、そっと握り返してくれて。あの人と全然違う手なのに、ちょっとだけあの感覚を思い出してしまって。




06.04.02