「……そっか、そんなことがあったのか」 話す気なんてなかったのに、結局は話してしまった。特に何が解決したわけでもなかったけれど、少しだけすっきりした気持ちになって、神妙な顔になってしまった友人にはちょっと悪かったかなあと思わずにはいられない。暗い気持ちにしたかったわけではなかったから。 「でも、もう大丈夫だから!」 明るくそう切り出すと、友人はきっと表情を固くした。怒っているのだ。 ……なぜ? 「大丈夫?あんた、本気でそう思ってるわけ?」 「……え、うん…………」 「あのさあ、その顔鏡で見たわけ?どこが大丈夫だってのよ」 ずきりとした。もう触れてほしくなかった。いくら仲がいいからって、ずかずか土足で私の心に踏み込んでほしくなかった。でも、それは私のために言ってくれるのだと思ったから…何もいえなかった。 「はただ逃げてるだけだよ。男に逃げられたから臆病になってる。それは仕方ないことなのかもしれないけど、今のあんたはただ悲劇のヒロインに浸りたいだけなんじゃないの?」 「ち、違う…!」 「どこが違うの?結婚した後で後悔して、苦労したわけでもないくせに。自分に好意を持っている相手だって近くにいるくせに。あんたのことをいつだって考えてくれるご両親だっているくせにさ」 私は何もいえなかった。 そのまま、しばらくの間ずっと重い空気がお互いの間に流れる。 「……ごめん。八つ当たりしちゃった」 重い空気を打ち破って口を開いたのは、友人のほうだった。明るい表情をしているつもりなんだろうが、どこか切ない表情で。タバコはもう3本も灰皿にねじ伏せられている。 「あんたがあーんまりにも幸せな悩みでうじうじしてるからさあ…つい、ね」 彼女に何があったのかは知らない。彼女はかたくなに話さなかったし、私もそこまでして聞きだそうとは思わなかった。あわなかったこの数年で彼女に何があったのか、想像することも出来ない。 「、あんたさ、本当は自分の気持ち、わかってるんでしょう?」 いたずらっぽく笑った顔は、もう先ほどの色を見せてなくて。私の知らない彼女に、なぜか置いていかれた気持ちになって。でも、彼女の言葉はすごく胸にしみた。だから、かなあ。無性に大和君にあいたくなった。 07.03.17 |