自分の気持ちを受け入れてしまうと、いつもの何気ない行動一つとっても妙にどきどきして照れくさかった。こんな気持ちは学生以来で。というか、学生の時よりもどきどきしていると思う。大人になれば、こんな風に恋に悩んだり、どきどきしたりなんてしないと思っていたのに。 「ちゃん?」 「え、あ……何、大和くん」 前と違って、『やまとくん』と呼ぶ声までやわらかくなったような気がする。自覚したとたんこれだなんて、千尋君じゃなくてもばれてしまいそう。心配そうに覗き込んでくる大和くんは、分かっていてそうしているのか。それとも、ただただ私が心配でそうしてくれているのか。正直、私にはよくわからない。 大和くんの家でご飯を食べるのは、いつものことだ。今日はちょっと寒いから、シチューでも食べようということになって。仕事で遅くなるといっていた千尋君のかわりに、私と大和くんが夕食当番だった。2人で台所に立つのなんて、今までだって何度もあったのに。今はこの距離が、ものすごくもどかしくて、照れくさくて。 (意識しすぎ……!) このままじゃいけないと思って、気合を入れようとぎゅっと目をつぶった。けれど、大和くんはそんな私を見て気分が悪いんじゃないかって思ったみたいで、支度は僕がするから座っていてと私をリビングに追いやってしまった。リビングに来ても私は特にすることがなく、とりあえずソファに座ったまま、キッチンで料理を作る大和くんを見ていた。 「ちゃん、大丈夫?」 「あ……ありがとう」 しばらくして、一通り支度を終えた大和くんが暖かいカフェオレを持ってリビングにやってきた。一つは私に。もう一つを、自分で飲んで、それから私の隣に座る。 「千尋クン、遅いねぇ」 テレビでも見てようか。そういいながら電源をつけて、適当にチャンネルを回していくけれど特に見たいと思うものはなくて。どれがいいかなあなんて悩む大和くんの隣で、私はどきどきどきどきしっぱなし。 (今までだって、こんなことあったじゃない) ―――理想は、夜の遊園地。観覧車に乗っているときに、イルミネーションを見下ろしながら。夕食を外で食べている時でもいいかなあ。ファミリーレストランじゃなくて、ちょっと高めのディナーなんか食べて、その後はおしゃれなバーにでも行ってシャンパンを傾けながら。 「ちゃん、なにか見たいものある?」 今までテレビに向いていた大和くんの顔が、くるりとこっちを向いて。 「……………すき」 大和くんの指が、思わずテレビの電源を切った。 07.03.25 |