どれくらいたったのだろう。せっかく大和くんが好きだと言ってくれたのに、私は何も言い返すことができなくて。嬉しくてたまらないのに、何をいえばいいのかわからなくて。呼吸の仕方も忘れてしまったように、ただ耳に聞こえるのは私の鼓動だけで。 「ちゃん………?」 あんまり何も言わない私をいぶかしんだのか、大和くんが私の顔を覗き込んできた。私は、思い切り息を吸って、そして――――止めた。 「や、まと………くん」 私の体は、大和くんにぎゅっと抱きしめられていた。私はその時、いつも同じくらいの身長だと思っていた大和くんが、実は私より大きいことを知って。私はその時、大和くんの胸板が見た目よりも逞しいのだと知って。 「嫌だったら、僕のこと突き飛ばしてくれていいから」 そういった言葉とは反対に、大和くんはさらに腕の力をこめる。 「……そんな言い方、ずるい」 あなたを好きだといったわたしが、あなたをつきとばせるはずないのに。 私の言葉に、大和くんがいたずらっぽく笑った。それから、ゆっくりと近づいてくる。私はただ静かに彼を受け入れて、そしてまぶたを閉じる。それは、触れるだけのままごとみたいなキスだった。けれども、今まで体験したキスのどれとも比べものにならなくて。 たとえるなら、初めて付き合った男の子とのキスに似ていて。 触れ合った後大和くんを見やれば、先ほどよりももっと真っ赤にした彼がそこにいた。なんだかおかしくなって、今度は逆に私が大和くんを覗き込む。不自然なほどに私と目を合わせない大和くんは、可愛らしくて、そしてとても愛おしかった。 「……ちゃん?!」 だからなのかなのだと思う。そんな大和くんが愛おしくて、私はぎゅっと彼に抱きついた。慌てたのは彼のほうで、そのおかげで彼は後ろにごろりと倒れるはめになった。そんな時でも私を気遣ってくれているのか、大和くんの腕はとっさに私を抱きしめていて。 「あっ、その、ご、ごめん!」 慌てて大和くんは私をはがそうとしたけれど、私は逆に彼の背中に腕を回した。フローリングと大和くんの体重にはさまれた手は痛かったけれど、回した手から、彼の背中に無数の古傷を感じた。傷に触れると、彼は少しだけ体を硬くしたけれど。 私は、大和くんの体にあるこの傷がどんな風についたのか、まだ知らない。ただ、この傷一つ一つに愛しさを込めてなぞった。その傷に触れることは、大和くんの過去に触れることだ。多分きっと、とてもつらい。でも、いつか教えてもらえたらいいなと思う。 「くすぐったいよ」 そういって大和くんは身をよじったけど、なおも触れ続ける私に諦めたのか次第に腕の力を抜いて、そっと私の背中に手を回してくれた。そうして、ゆっくりとさすってくれるその手のひらが温かくて、優しくて。大和くんの心臓がとくとくとくと脈打つのを感じながら、早鐘を打ち続ける私の音も聞いてほしくて。 私はそっと大和くんの背に回した腕に力をいれた。 07.03.29 |