きみが、すきだよ



チャン、ちょっと飲みすぎじゃないの」
「そんなことないとおもうけど……」

そういう彼女の飲むペースは、どう見たっていつもよりはやい。千尋はそれ以上は彼女に何も言わず、ただ吹雪がついだビールを飲む。

「そんな苦いの、よく飲めるね」
「………飲んでみる?」

にやりと笑ってジョッキを彼女に差し出すが、彼女は首を振って自分のグラスを傾けた。これが大和であれば疑いつつも口に含んで、顔一杯に『苦い』をあらわしてくれるだろうに。まあそもそも、彼女が千尋と知り合うきっかけとなったあの夜はあびるほど缶ビールを飲んでいたのだから飲めないわけはないのだろうが。

「お酒!…って感じのにおいがだめなんだよなあ」
「ふーん」

ずるずると彼女の体が千尋に寄りかかる。なんだかんだいって酔いが回っているのは明白である。当たり前かもしれない。口当たりの良いカクテル類は、以外にアルコール度数がたかいのだ。

「―――うん、ごめんね、ちょっとだけ、ね」

そういって人の輪から抜け、ほんの少しだけほっとした様子の大和が、千尋とは反対側に腰を下ろした。それから、杏子の手にあるグラスを見て少しだけ眉を寄せる。

ちゃん、それ、何杯目?」
「えっと……4?5?かな」

大和くんも飲む?と差し出されたグラスを手に取り、そしてそれをテーブルに置くと、大和は千尋に寄りかかった彼女の体を引き寄せてジーンズポケットに押し込めていた携帯から電話をかけ始める。

「大和くん?」
「だめだよちゃん。立てなくなるくらい飲んじゃ」
「だいじょうぶだよう。ちゃーんと立てるもん」
「ここはおうちじゃないんだよ?ホテルまで送っていくから、今日はもう寝ようね」

そういって、タクシー会社との会話をはじめる大和。こどもあつかいするー、と唇を尖らせながらも大和の肩に頬を寄せ体をよりかからせる彼女。そして一見無関心を装いつつも、さりげなく千尋が彼女の持ってきた荷物を手元に寄せる。

それは、少し前のこばやしーずの姿に似ていて

「……やまとくんは?」
「僕はもう少しだけ出てから帰るから」
「じゃあ、まってる」
「だめだめ。ちゃあんと寝てないと」
「そーそー。じゃないと、オハダ荒れちゃうよ?」
「うっ……それは……困る」

じゃあ早く寝ないとねぇ、と言葉巧みに丸め込み、大和ともども迎えに来たタクシーへ彼女を乗せるために店内から出て行く千尋。やっていることは在学時代と大して変わらないのになんだか唖然とするしかない3−A面々。

「やるわね……ちびっ子小林」

ぼそりとつぶやいたあげはの一言が、なんだか妙に説得力のある言葉になってしまったのであった。




09.02.11